「梔子湾」


荒山何処旧行宮
島寺沙村煙靄中
一去龍舟春幾度
紫藤花落暮湾風


荒山何れの処ぞ旧行宮
島寺沙村けむる靄(もや)の中
一たび龍舟去って春幾度
紫藤花は落つ暮湾の風

梔子湾…沼隈郡沼隈町の阿武兎観音の西奥
龍舟…天皇の御召船(神武天皇)

【大意】荒山のどこらにもとの行宮があったのか、砂浜のつづく村の高処に寺が、もやにけぶっている。一たび御召船が去って幾度春がめぐってきたか。紫色の藤の花は既に落ちて、暮れなずむ入海に昔ながらの風は吹いてやまない。
【出展】『黄葉夕陽村舎詩』前編五-一九

もどる