「丁谷餞子成卒賦」

「丁谷餞子成卒賦」

數宵閑話毎三更
未盡離十載情
送者停客頻顧
梅花香裏夕陽傾
菅茶山

数宵の閑話 毎(つね)に三更(さんこう)
未(いま)だ尽(つ)きず 離(ひり)十載の情
送者は(つえ)を停め客は頻(しき)りに顧(かえり)みる
梅花香裏(こうり) 夕陽傾く

子成…頼山陽(らいさんよう)の字(あざな)。菅茶山の廉塾(れんじゅく)の塾頭を勤め、のち京都にいき塾を開いた。
丁谷…ようろだにと読む。神辺町川南にある谷で現在でも梅が多く植えられている。その梅林には「茶山山陽餞飲之所」の碑がある。
三更…一夜を五分した真ん中。零時前後。
離…人と別離すること。

【大意】数宵にわたり深更に及ぶまで毎夜しみじみ語り更かしたが、それでも十年間別れて過ごした間のつもる話は尽きない。自分はいつまでも杖を立てて見送り、客(頼山陽)は、しきりにふりかえりつつだんだん遠くなる。そうしている間に、この梅の匂う里に夕陽が傾く。
【出典】 『黄葉夕陽村舎詩』遺稿四−一四所収

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