葛原しげる紹介・レジュメ
①しげるの童謡
彼の童謡は「喜怒哀楽」の中、一貫して「喜・楽」を詠んだ。子ども達を励ますと同時に自分
を鼓舞しようとした。孔子が「邪無し」(邪念がない。無邪気)と高く評価した「詩経」に似て、
「とんび」のように繰り返しと対照が多く、平易なことばで表現されている。
②なぜ小学校訓導に?
同世代の福山中出身者、丸山鶴吉(東京帝大―警視総監・出原冨子至誠女子高理事長
の伯父)、福原麟太郎(東京高師―同校教授・しげるとスティブンソン著「子供の詩」共訳)
など周囲の動向や能力を考え合わせると大きな謎である。
一つは、しげるが心底子ども好きであったこと。もう一つは東京高師で下位春吉と創始した
「大塚講話会」。校内外、全国各地に巡業、ことばとからだを通して直接子どもたちと接し、
その在り様を模索した活動であろう。
③ニコピン先生の意味するもの
童謡集『こんころ踊』序に、「ニコニコ」は「円満、幸福、平和」、「ピンピン」は「進取」(自ら
行動すること)と解説している。
「ピン」を単なる「健康」ととるのは浅い解釈と云わねばならない。
④しげるの童謡(定義)
第1、児童に共鳴多き事柄を 第2、短く、第3、口調よく、第4、平易な言葉で歌った詩で
ある。
⑤しげるの短歌
福山中学時代の「校友会詩」への寄稿、東京高師時代の2年先輩前田純孝(与謝野鉄幹
主宰「明星」への常連の投稿者)による短歌指導、佐々木信綱(歌人、「心の花」主宰)との
交流を通じて、しげるは短歌とも無縁ではなかった筈だが、意外にもその事蹟は知られて
いない。因みに、しげる唯一の自選短歌集に『電車の国旗』がある。
⑥しげるの校歌
高校野球の強豪「広陵高校」校歌の作詩者として有名だが、団歌、社歌も数多く作詩して
いる。戦前・戦後、海外も含め、四百編以上と言われている。校歌の意義について、帰属
意識の高揚を第一に掲げている。
⑦しげるの少年小説
しげるは自ら編集した「少年世界」に、日常生活に普通に見られる少年の葛藤をみずみず
しく描いた短編を発表している。

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